Banner

今からでも読んでみよう憲法!
第2回 「第1章 天皇」
明治憲法とくらべると見えてくる・・・!

●ミニ解説●

 正直に告白してしまおう。私が中学生のときに「よし! 憲法を読むぞ」と決意、がんばって前文を読んだのですが、さて第1章というところですぐにつまずいてしまいました。それがこの天皇条項です。中学生の私には、「どうして国民のことじゃなくて天皇のことから始まるのだろうか」というのが疑問で、この憲法はほんとうに私たち国民のものなんだろうか、と疑わしい気分にもなったのを覚えています。(条文は解説のあとに記載)

  歴史的な意味

「前文」を読んだときにもお話ししましたが、憲法ができた背景や歴史を抜きにしては、その意味がはっきりしないということだと思います。この天皇条項のポイントは、「天皇の地位は、主権の存する国民の総意に基づく」ということで、「主権は国民にある」ということも重ねていっています。

 では、この現行憲法ができる前はどうだったでしょうか。

 明治憲法、つまり「大日本帝国憲法」は、1889年2月11日に発布され、1946年11月3日に廃止されるまで57年間続いたものですが、この第1条では、「大日本帝国は万世一系の天皇これを統治す」となっています。つまり「日本は天皇が治める=天皇に主権がある」とされていました。しかも、第3条で、「天皇は神聖にして侵すべからず」と定めてあり、この「天皇主権」は、「神の意思」にもとづいたものだといっていたのです。このもとでは国民は天皇に仕えるもの(臣下)でしかありませんでした。

 明治憲法では、天皇にすべての権力が集中していました。法律を作るのも天皇、司法も「天皇の名において」行われるという条項になっています。さらに、天皇にあたえられた軍隊の最高指揮権(統帥権)は、独立した権限として確立されました。

 この歴史を念頭に置いて、憲法前文とともに天皇条項をあらためて読むと、新しい憲法では、明治憲法の「天皇主権」をはっきりと否定し、「国民が主権者」である、という大転換をおこなったものであることがよりはっきり見えてきます。

 現行憲法ができる過程で、当時の日本の内閣は、はじめは明治憲法とほとんど変わりのない天皇条項をもつ憲法草案をつくりました。けれども、その案は、連合国総司令部が受け入れませんでした。そして、同司令部は、国民主権、戦争放棄、基本的人権の尊重、三権(立法、行政、司法)分立という基本にもとづいた憲法づくりを指令しました。この基本は、第二次世界大戦でファシズムや軍国主義とたたかった世界の人々の願いが背景にありました。

 日本でも、1946年の毎日新聞の世論調査では、「象徴天皇制」について賛成が85%にものぼっています。「戦争放棄」に賛成は70%です。それまでの天皇主権のもとで「臣下」としかみなされなかった国民は、この新しい憲法でやっと「天皇の統治」から解放されたということですね。

 ●参考にした本●『憲法は押しつけられたか』(かもがわブックレット20) 加藤周一著、かもがわ出版

第1章 天皇


第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。


第2条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。


第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。


第4条

1.  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政 に関する権能を有しない。

2. 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。


第5条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、前条第1項の規定を準用する。


第6条

1. 天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
2. 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。


第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事にかんする行為を行う。

1 憲法改正、法律、政令および条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大使および公使の信任状を認証すること。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、および復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使および公使を接受すること。
10 儀式を行う。

第8条 皇室に財産を譲り渡し、または皇室が、財産を譲り受け、もしくは賜与することは、国会の議決に基づかなければならない。

              〔かなづかいをあらためてあります。ウェブ編集者〕

 


 

緊急アピール●選挙人登録をしましょう!

 アメリカなど海外に住む日本人の方と「在外投票」についてお話しすると「とにかく総領事館に行けば投票できるんでしょ?」と聞かれます。じつは、その前に投票人の名簿に「登録」されないといけないんですね。「登録申請」をすませて、「在外選挙人証」をもらってはじめて投票できるのです。

 世界各地に在留する日本人(在留届を出した人)はいまや100万人を突破したと見られていますが、2007年7月29日現在、全国の選挙管理委員会の在外選挙人名簿に登録されているのは10万2551人だそうです。ほぼ90%が未登録というわけですね。ちなみに、アメリカの在留邦人は約34万人(2004年)です。

 選挙は、平和やくらし、そして憲法など重要な課題で国民の意思を示す一番簡単な方法です。いままで投票に参加できなかった方も、これからぜひお考えください。

☆筆者も、投票にこぎつけるまではさまざまな間違いを重ねました。なんでこんなにややこしいのかと思いながら、大事な一票、むだにしないぞ、とがんばっています。

朗報! 憲法改定国民投票に在外邦人も参加できる

 憲法改定のための国民投票法が最近制定されました。それによれば私たち在外邦人も投票に参加できます。この法律は3年後に施行されます。つまり早くて3年後、憲法改定案がだされ、それが衆参両院を三分の二以上の賛成で通過すれば、国民投票になるという可能性があるのです。国民投票では、改定案に投票総数の過半数が賛成すれば改定が決まります。最低投票数を設けなかったという欠陥がある法律です。これからおおいに憲法にかんする議論を広げ、あぶない改定には「ノー」の声をあつめていきましょう。

 そこで、私たちの緊急アピール――。選挙人登録をしよう!

登録のしかた

登録できるのは、日本国籍をもっている満20歳以上で、海外に3カ月以上住んでいる方(申請のときに3カ月以上住んでいなくてもOKになりました。在留届と一緒に登録申請もできます。また、在留届はインターネットでもできます=外務省の在留届電子提出システム http://www.ezairyu.mofa.go.jp/ を ご参考に)。

申請できる人は、A. 本人、またはB. 本人の同居家族など。管轄の日本大使館や総領事館に、A. 本人か、B. 同居家族などの申請者が、直接出向かなければなりません。

あなたの住んでいるところを管轄する総領事館一覧はここをクリック。

 また、領事があなたの住んでいる場所に出張してくる「領事出張サービス」があれば、そのさいにも申請できます。

☆筆者が住んでいるセントポール市(ミネソタ州)は、管轄総領事館がシカゴにあり、車で片道6時間(!)かかります。でも年に一度、総領事館のミネソタ出張サービスがあります。遠くてなかなか行けないという方は、各総領事館に出張日を問い合わせてみたらいかがでしょう。

申請書は在米日本大使館・総領事館にあります。総務庁のホームページでも入手できます(http://www.soumu.go.jp/senkyo/zaigai6.html)。申請書には、日本での最終住所地と本籍地を記入します。最終住所地で転出届が未提出の人は登録できないのでご注意ください(まだの人は転出届を出しましょう!)。

申請に必要なもの:

A. 本人申請の場合

1. パスポート、または日本の運転免許証、アメリカの外国人登録証、滞在許可証などの顔写真つき身分証明書
2. その総領事館の管轄地に住み始めた年月日から、登録申請の日まで、そこに住んでいることを証明する書類(住居の賃貸借契約書、居住証明書、住所が書いてある電気・ガスなどの領収書)。

 ただし、3カ月以上その住所に住みつづけている方は、その全期間ではなく、「3カ月以上住所を有していることを証明する書類」でOK。また、3カ月以上住み続け、しかも在留届けも3カ月以上前に出している方は、2. はいらない(つまりパスポートだけでOK)。

B. 同居家族などを通じた申請

1. 本人が申請する場合の必要書類(上記の1.2.)にあわせて、申請をおこなう同居家族などの人のパスポート
2. 本人が書名した「在外選挙人名簿登録申請書」と「申出書」総務庁のホームページから入手できます。
http://www.soumu.go.jp/senkyo/zaigai6.htm

 こうして登録申請をすると、のちほどあなたの市区町村選挙管理委員会が発行した「在外選挙人証」が送られてきます。実際の投票のさいは、この選挙人証を示すことが必要なのです。

「投票のしかた」は次回、ご説明します。